コラム162 春一番U近況(2)航海機器

コラム162 春一番U近況(2)航海機器
 春一番U世号には一般のクルーザーにはない航海機器を備えている。乗船診断用の電
子機器類も普段は艇に載せているから、ヨット用としては勿体ない贅沢なものもある。
紹介しよう。磁気コンパスは4つある。
1、操舵用の手前読みコンパス
2、方位測定用のハンドベヤリングコンパスで首にぶら下げて使用する。
3、自動操舵のセンサーに使っている小型鋼船用のもの。
4、予備の操舵用のもの

双眼鏡は3個持っている。(図2)
1、ニコン製分画双眼鏡
 これは初めて東南アジア航路の貨物船の船長になったときに購入したもので、以来40
年愛用しているものである。分画の説明や、その利用方法については拙著「ヨットマン
の航海術」に詳しく書いている。プロ用で少々重いのが欠点で、最近はほとんど使わない。
2、フジノン製双眼鏡
これは野本先生が愛用されていたものであるが、これも最近ほとんど使わない。

3、ニコンの16倍防振型双眼鏡 
 これはニコンスタビライズ16×32という代物で、内蔵のジャイロとダイレクトモー
ターによる制御により、ジンバル構造に組み込まれた正立プリズムを常に安定した状態に
保つため、艇が縦、横揺れしても目標を安定して捕捉できる。
防水型であり、片手で十分使えるから航行中はもっぱらこれを愛用している。単3アルカ
リ電池2本が必要なのが欠点といえば欠点だが、艇には単3電池20本を常時スットクし
ているから問題にはならない。軽量であり、片手で使えるし、倍率も16倍であるから、
もっぱらこれを愛用している。(仕事で訪船するときに持参する。)

レーザー距離計(図2)
 ニコン製で、1,000メートル以下の近距離物標の精密距離測定に役立つ。自分自身
の距離感の更正に用いるほか、乗船診断時には携帯して、乗組員の目測精度をチエックす
るのに使用している。 

暗視望遠鏡は2個持っている。(図1)
夜間、暗い港内、泊地に出入りするときに非常に役に立つが、昼間は使用できないし、夜
間でも強い光を直視できないので、取扱いには注意がいる。
1、単眼暗視望遠鏡
2、双眼暗視望遠鏡
 夜間の航行時、特に出入港時には便利だが双眼より単眼暗視望遠鏡の方が使い勝手がいい。
 この暗視望遠鏡を見た、ある友人が言うのに「さては、夜中にこれを使って赤外線を発
射し、ナイロン系の衣類を着た女の素肌を見ようと企んでいるな。!」という。
 とんでもない話だ。その気は十分だが、やったことはない。
VHF送受信機(図7)
 航行中は常時聴取しているし、各マーチスや海上保安部とも交信して航海情報を入手し
ている。内航船はVHFをもっと利用すべきだ。
 写真の携帯VHFは16チャンネルをデッキで聴取するためのものである。

レーダー(図5)
  装備しているのは光電製の小型レーダーであるが、結構性能がいい。瀬戸内海では荒
天でなければ海面反射が少ないから、1海里以内の漁船、遊漁船、プレジャーボートを捕
捉することができる。霧中では1.5海里レンジで使用しており、不安のない航海ができる。
 しかし、最近の漁船や遊漁船は霧中でも20ノット以上で航走することが多く、1海里先
の反航の他船は、こちらが7ノットなら相対接近速度から2分少々で最接近することになる。
視界制限状態時の航海では、必ず機帆走ないし機走し、操舵は自動操舵にする。
そして1分以上レーダー画面から眼を離さないように心がけている。
 プレジャーボートではジャイロがないのがふつうである。したがってレーダーで他船と
の衝突針路の有無を察知しようとするなら、相対方位の変化の有無と接近状況で判断する
ほかないので、定針航行が必要である。
 499総トン以下の船舶は殆どがシングルハンダー(一人単独当直)であり、一人三役
をこなさなければならないのであるから、原則として操舵は人間より上手に操舵してくれ
る自動操舵に任せなければならない。人間はレーダーを連続監視すべきだ。ときどきは周
囲を見るが、これは視界の状況を確認するためである。
 霧中には手動操舵で航行せよという者がいるが、状況による。私は、こうした形式的な
判断や指導をする人の頭脳が分からない。

 レーダーのガードゾーン機能は、0.5ないし1海里でほぼ全周に設定する。警戒幅は
0.25海里にしている。ただし、内蔵の警報電子ブザーは音が小さいので、インターフ
エイスを介して大音量(250デシベル)の電子ブザーを鳴らしている。おかげで艇のど
こにいても、接近警報を聞くことができる。
 レーダーを長時間使用するときは帆走中でも必ずエンジンを起動させ発電機から電力を
供給ている。バッテリーをあげないためである。
 また、霧中は微風のときが多く、帆走状態では他船を十分に避航することができないこ
とがあるので、いつにても機帆走状態に移れるようエンジンをアイドリング状態にしてお
くのだ。エコートレイル機能も使用すれば他船の動静の概略をしることができる。レーダ
ーは視界がいいときに作動させ取り扱いに習熟しておくべきだろう。レーダーに限らない
が機器類は必ずマニュアルを熟読しておくべきだ。

音響測深器(図7) 
 音響測深器は2個もっている。一つは写真のもので、もう一つは携帯型の釣用である。

GPS衛星航法装置受信モニター画面(図4)
これは春一番U専用に開発したGPS受信ソフトをパソコンにインストールしている。画
面に表示される情報は、
@地形図は海上保安庁刊行の海図を大型スキャナーで読み取った画像で、航跡と3
分先の予報位置をベクトルで表示させている。
A航路は予め設定できる。
B音声警報は、
 ☆危険圏接近警報
 ☆航路離脱警報
 ☆通報地点通過警報
 ☆変針点接近警報
 ☆変針点通過警報(次の針路が指示される。)
 ☆走錨警報
 上記は全て女性の声で繰り返し発声される。
C画面右側には各種情報が表示される。
 ☆所在地の緯度、経度
 ☆UTC(協定世界時)+9時間の日本時
 ☆進路、速力
 ☆現在位置から現在のマウス位置までの方位と距離
 ☆目的地までの残航程
 ☆現在速力での到着予定日時

AIS(自動船舶識別装置)情報受信専用モニター画面(図3)
 500総トン数以上の船舶及び外国船の情報が地形図に表示される。
 春一番Uの泊地では北は広島、東は来島海峡航路西口付近、西は八島、上関海峡付近
までの船舶の動静が分かる。
 本船(春一番U)との最接近距離も表示され、最接近距離が設定した距離以内になる
と、該当船舶の表示が赤色となって警告される。
 各船舶の大きさ、現在の針路、進路、速力のほか出航地、目的地、到着予定を知るこ
とができる。

コックピット専用GPS受信機とモニター(図6)
 これはデッキでGPS情報を取得するためのパソコンでGPS受信機は安価な市販の
ものである。表示情報はキャビン内のもと変わりがない。
 ヘッドマウントディスプレイはキャビン内のGPSモニター画面やAIS受信情報を
デッキで見るためのものである。(訪船指導時に持参する。)
 
 春一番Uでのインターネットの利用は、私のホームページのほか、気象庁の天気予報、
海上保安庁のホームページから瀬戸内海の潮流状況を知る。海上保安庁の海洋情報部の
情報閲覧などである。
 この受信カードを購入すると、一定時間、使い放題で、毎日使用するわけではないか
ら最も経済的である。 瀬戸内海では殆どの沿岸で利用できる。(図8)

陸電が供給できないとき、室内照明はLEDによる照明を点灯している。
LEDは高価だが、電力節約に申し分がない。(図10)

操舵
 操舵方法は、@舵輪を直接動かす。A油圧駆動によるリモート操舵(ケーブルは10
メートルあるから、艇のどこに居ても遠隔そうだができる。(図7)
 Bチラー(舵柄)による手動操舵、C自動操舵、D予備自動操舵

風速は波頭でおおよその風力が察知できるから、風速計は携帯型で我慢している。
サーチライトはコラム146で紹介したものを装備している。
 今のところ、以上で我慢しているが、いずれは簡易型AISが欲しい。 



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