コラム161 春一番U近況(1)

コラム161 春一番Uの近況(1)
 春一番U世号の根拠地は松山市沖の興居島北浦第一種漁港である。
 先ごろまで岸壁に直角に「おもて着係留」していたが、港内防波堤側の桟橋を使用し
ていた漁業者が亡くなり、桟橋が老朽化して使用に危険なので、桟橋を新しく造り直す
ことにし、旧知の屋大工に頼んでいたところ、先ごろ出来上がった。
 現在は、ここに左舷係留している。
 防波堤から桟橋までは鉄製の梯子を架設し、桟橋への出入口扉には鍵がかかるように
なっている。桟橋の長さは10メートル、幅3メートルであるから大人5人が乗って
も1センチ程しか沈まない安定したものだ。
 春一番Uの船体に影響する台風時の風圧力、波力を推定考慮して桟橋係留用錨重量、
索の強度や長さを決めたので、平均風速40メートル毎秒でも、十分堪えることができ
るはずである。
 桟橋上にはテントの下にテーブルと椅子を固定し、倉庫も作った。
 脚船である「こはるいち」は補修のため陸揚げしているが、「こはるいちU」は桟橋
上に置いている。水は近くの小さな公園の蛇口から供給できる。問題は陸電がとれない
ことである。
 しかし、桟橋の照明には太陽電池のガーデンライトを設置し、夜間のキャビン内照明
はLEDである。パソコンやテレビも使うし、VHF通信も行うが、日中は80Wの太
陽電池でバッテリーを充電しているから、電力消費を心配したことはない。
 電子レンジ、湯沸しポットが使えないのが不便だが、いずれ対策を講じるつもりでいる。
 桟橋から乗艇するための踏台も造ったが、写真にある踏台の上部の板は蝶番付きで艇
側に倒せるので、桟橋や艇が動揺しても乗下艇に支障がない。
 艤装品の近況をお見せしよう。 下図は左舷船尾の状況、太陽電池、船尾のアンテナ類
を示したものである。
 春一番では前方のセール、トイレ用の清水タンクなどが邪魔になって、コックピットに
座っていると前方死角生じ見張りの妨げになる。座り続けて立ち上がって見張りをするこ
とがないと、一航海に一回くらい「はっと」することがある。
 そこで、航行中だけ、写真のもの以外に前方見張専用の監視カメラを臨時にマストに設
置できるようにした。これは無線カメラで、モニターで電波を受信する。
 モニターはコックピットに置き、座っていても前方が見張れるという横着者には<もっ
てこい>の仕掛けだ。
 写真の監視カメラは自動車用の有線バックカメラである。
 航行中、食事の支度などでキャビンに入り、コックピットが無人同様になって見張りが
できないときのためのもので、マストの前部に3個と、船尾に1個の合計4個の監視カメ
ラを設置し、キャビン内のモニターで周囲の状況が監視できる仕組みだが、どちらかとい
うと気休めのようなもので、やはり肉眼見張りには遠く及ばない。
 私はエレキが大好きで、いろいろな計器を購入したり工作しているが、航海援助装置だ
けで衝突や乗揚げ防止に万全を期すことはできないようである。
 ヨットに限らず、一般船舶でも、船舶が輻輳する有視界の海域では、少なくとも90秒
以内に1回は肉眼で全周を見張るべきであり、そうしているつもりだ。
 視界制限状態時はレーダーから眼を離さず、適切な情報処理をしなければならない。
 最小限度必要な情報処理とは、相手船の方位の変化模様、接近模様である。

 救命浮環はオカザキヨットから購入したイギリス製でJCIの検定品ではないが、実用
品であるから、30メートルのライフラインを取付け設置している。
 救命浮環は艇が沈んだときに自動的に浮環自身の浮力で浮上しなければならないもので
ある。法定備品のオレンジ色の浮環は見かけが悪いので船首倉庫に格納している。
 各国の旗は、野本先生がスエーデンに在住されていたとき春一番U世号で訪れた諸国の
国旗で、松山市の「(株)コピー愛媛」の真鍋君に頼んでアクり板に印刷してもらったも
のだ。
 ウインチは揚錨専用のものである。フリューク(爪)をたたんでいる錨は多目的に使う。
 例えば岸壁係留時、反対舷から吹き付けられて出航が難しいとき、「こはるいちU」で
この錨を沖に運んで投錨し、電動ウインチでこれを巻き込みながら離岸するなどの用途に
使う。
 航行中における春一番Uの電力消費は、もちろん夜間が最大で、常時消費は、航海灯(
3色灯)10W、油圧操舵装置による自動操舵30W パソコン(EeePC8G)12W,室
内照明20W 合計72Wほどであるから、210AHのバッテリーを昼間80Wの太
陽電池で充電しているし、帆走中でも少なくとも一日1回1時間程度エンジンをアイドリ
ングで運転しているから、バッテりーの心配をしたことはない。
 アンテナはVHF専用、AIS受信機専用アンテナ、レーダーアンテナ、テレビアンテ
ナで配置は相互干渉が少ないように配置しているつもりだ。AIS受信機のためのGPS
アンテナもある。
 写真にはないが、汽笛は普通乗用車のホーン2個を利用し、汽笛として使っている。
 この汽笛の有効音響到達距離は無風時で200メートルくらいだが、接近する高速遊漁
船に対してどのくらい有効かは、いずれ実験してみようと思っている。


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